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充活動とダイエットと言いたいこと…

株主として日産に・・・いやカルロス・ゴーンに一言!

バカやろーーーーー!!

昨日、トップニュースとなった日産自動車会長 カルロス・ゴーン氏の金融商品取引法違反での逮捕。衝撃でした。加えて取締役のグレッグ・ケリー氏も逮捕。

こちらが日産自動車のプレスリリースです。

newsroom.nissan-global.com

逮捕から一夜明け、本日9時に市場が開いた東証1部では、日産の株価がどんどん下がっています。(昨日の終値は1,005円。今は960~40円台ウロウロ)株主としては憤る気持ちしかありません。株の長期保有者として、何より悲しいのは、その裏切り行為です。株主に対して、そして従業員や取引先に対して・・・。

ちょっと長くなるので、コンテンツごとにまとめたいと思います。
(注)ここで言う「経営陣」は取締役会のことです

企業は一体、誰のもの?

 昨夜の西川社長の記者会見では、長く権力の座にいたことも一つの誘因となった、というコメントがありました。確かにそれも誘因でしょう。権力者は権力を失うことを一番恐れるのです。ましてや、経営を立て直したという錦の旗を掲げられることで、周りにいる日本人役員も「No」と言うことが出来なくなっていたのは事実でしょう。そこには不利益を被りたくない、自分がいる間はゴーンさんに引き立てられていたい、という日本人役員の私欲もあったのではないかと疑ってしまいます。

企業は言うまでもなく、株主のものです。そして、そこで働く従業員や支えてくれる取引先のものでもあります。だからこそサプライチェーンバリューチェーンという言葉が生まれているのです。決して、経営者のものではないのです。それをゴーンさんはいつから忘れてしまったのでしょうか。

経営陣も、その他の役員も、本当に日産という企業やそこで働く従業員、株主のことを考えていたのでしょうか?そこに「サステナブル(持続可能性)」の考えはあったのでしょうか?会社が持続していくには、色々な要因が必要です。魅力的な商品はそのひとつでしょう。でもそれ以上に、経営陣や役員のガバナンス、倫理観は重要です。それが大きな不祥事になり、会社が解体された事例もあります。なぜ、教訓にできなかったのか?自分たちだけは大丈夫だと思っていたのか?一度、破綻しかけた苦しみを忘れてしまったのか?

私の知る限り、日産の従業員は、クルマが好きで、日産が好きで、会社やクルマをもっと良くするために自分が果たすべき役割を知っている優秀な人たちです。今回のことで、日産を離れる従業員も出るかもしれません。人材不足が叫ばれている昨今、ガバナンスの不祥事は、人材確保の妨げにもなります。人材が確保できなければ、事業を縮小せざるを得なくなり、技術も流出します。

今回の事件は、カルロス・ゴーン、グレッグ・ケリーに進言できず、放置していた過去・現在の経営陣の責任でもあると思っています。

社内からの告発

ここ最近、日産の不祥事が相次いでいました。排ガス検査の件も社内からの告発が発端だったと記憶しています。

日本人従業員たちにも不満が渦巻いていたのは容易に想像できます。重要ポストは外国人役員の息のかかった日産外から来た外国人たちで埋められ昇進できない日本人プロパー従業員たち。そんな外国人たちに支払われる高額の報酬、住宅、クルマ、帰省の飛行機代、果ては子どものインターナショナルスクールの費用まで会社が負担しているという話も・・・。さらにそういった外国人たちが自分たちのお気に入りの(クルマのことを知らない畑違いの)代理店などを連れてきて、高額な仕事を依頼し、そこからマージンを受け取っているのでは?なんていう噂も社内で聞くとか聞かないとか・・・。

でも、日本人の一従業員がそれを知ったとして、何ができたでしょうか。証拠はがっちり機密扱いにされて見ることはできなかったでしょう。そんな環境に疲弊してしまっていても不思議ではありません。だからこそ、今回、内部通報によって、日本人役員が動いたことが大きな成果だと思っています。これで、日産社内で好き勝手していた外国人役員や管理職が、監視対象になれば、ガバナンスの自浄作用を少しは外に示すことができるのではないかと思います。

別に外国人役員や管理職がすべてそうだった、と言うつもりはありません。マジメに日本や日産の文化を尊重して、仕事をしている人もいるでしょうから。でも、人間の悪いクセですね。一括りにしてしまうんですよ・・・。ごめんなさい。

外国人役員と日本人従業員の心の乖離

この記事では、クーデターではないかと書いてあります。

news.livedoor.com

社内の不満は、ゴーン氏ら一部の外国人が高給を取り、会社の金で贅沢三昧なのに、現場への投資は怠っていることへの反発であった。ゴーン氏自身が長期政権で権力の座に長くいて、腐り始めていたことは間違いない。

これは実際に聞いた話です。ゴーンさんによって外部から召集された外国人役員が初日に部下たちに対して自己紹介をしました。そこで「僕はXX(都内の高級住宅街)に住んでいる。誰か住んでいる人いる?」と聞きました。部下たちは誰も手を挙げません。その役員は「なんで住まないの?すごく便利な街なのに」と言います。ある日本人管理職が小声で「そこに住めるほどの給料もらってねーからだよ、お前らと違って」と。それほどまでに、外国人役員と日本人従業員には初めから埋められない差があったのです(報酬額も精神的にも)。

乖離があれば、せめて精神的な乖離を埋める努力をしなければいけなかったはずです。でもその外国人役員は、まったくそれをしませんでした。日本人は表立って反発はしません。外国人役員の周りもその人に都合の良い話しか耳に入れません。自分のお気に入りを外部から連れてきて、上級管理職のポストを与え、日本人従業員はその人たちに仕事をかき回され、結果的に何人かの日本人従業員が辞めていきました。

上のコンテンツでも書いた通り、外国人役員や管理職に好き放題贅沢をされ、でも自分たちの給料は上がらず、仕事もかき回されてめちゃくちゃになる。これで、日本人従業員の不満が溜まらないわけがありません。自分たちがどんなに頑張っても利益は彼らに持っていかれてしまうのですから、モチベーションも上がらなくなります。モチベーションが下がれば、仕事に意味を見出せなくなり、それを別の会社に求めることになります。志賀 前COOがその職を辞したとき、多くの日本人従業員が辞めたと聞いたのも納得です。

カリスマか暴君か

ゴーンさんは日産の従業員に誇りを取り戻させました。そして信頼されてきました。しかし、いつからか、それが独裁的になり、株主や従業員を裏切る行為に走っていたのです・・・。
人は、自分が抱えきれる以上の権力を持ってしまうと、誰しもこうなってしまうのでしょうか?常に自分を律し、常に株主や従業員のことを考えている経営者もいます。その差はなんなのか・・・。育ちなのか、周りの環境なのか。自分の心の問題なのか。
昨日の記者会見で記者から「カリスマだったのか、暴君だったのか」という質問が出ていました。両方だったのだと思います。

最初、日産に来たときは、カリスマでした。コストカッターと言われ、日本人経営者では出来ないことをバンバンしました。それに対する批判はあることと思います。それでも会社を建て直し、裾野が広い自動車産業の一端を救ったことは事実です。もし日産が潰れていたら、連結従業員13万人以上、取引先従業員が失業していたでしょう。それが日本経済にとってどれほどのダメージを与えていたか・・・考えると恐ろしいです。

しかし、その対価として与えられた報酬や待遇でコーポレートジェットに乗り、高級アパートメントに住み、ボディガードやメイドがいて、クルマは運転手付き、エレベーターのボタンでさえ押す人がいる、そんな生活をした人が、日産に来る前の生活に戻れるわけありません。いえ、それ以上に「もっと!もっと!」と欲望が増殖するばかりだったのでしょう。(ちなみにゴーンさんの娘はパリの社交界にデビューしています)その欲望が彼を暴君にしてしまったのでしょうか。なぜ?という疑問しか出てきません。

会社による刑事告発、株主訴訟の可能性

昨夜の記者会見では、逮捕された両名に対して会社による刑事告発も検討していくようです。当然、これは株主訴訟にも発展する可能性もあると思います。虚偽がなく、頑張った結果、業績が悪くなって株価が落ちるのは仕方ありません。でも今回は違います。

とは言え、東京地検特捜部の捜査次第でしょう。全容解明となるのか、新たな経営陣の布陣はどうなるのか、来年6月の株主総会はどうなるのか。まずは、22日に召集された臨時取締役会の結果について、速やかにプレスリリースを出してもらいたいと思います。

企業の不祥事で嫌な思いをして、心をすり減らしているのは、いつも末端の従業員たちです。常に取引先と接し、お客さまと接し、期待の声も怒りの声も、直接彼らが受け止めざるを得ません。経営陣は、守られています。ボディーガードもいます。広報担当者もいます。でも、従業員たちには守ってくれる人なんていません。経営陣は、自分たちの身のかわいさよりも、従業員たちを守るべきです。

日産のガバナンス信頼の回復に向けて

日本中、いや世界の株式市場にも大きな影響を与えた、今回の事件。簡単に信頼回復ができるとは思っていません。特捜の今後の捜査によっては、さらに傷が深くなる可能性もあります。日産のガバナンスへの信頼回復、ブランドの再構築、ゴーン色の一掃が必要になってくるでしょう。
ガバナンスについては、委員会設置会社だから不正が起こらない、独立取締役が少ないから不正が起こる、取締役会の独立性を確保しているから不正が起こらないなどとは一概には言えません。どんなにガバナンス制度が充実していても、不正は起こってしまいます。

しかし、一株主として、まずは、取締役会の独立性確保を日産に求めたいと思います。取締役会はその名の通り、執行役を取り締まり、経営を監視・監督することが役割です。日産では、カルロス・ゴーン会長が取締役会の議長を務めていました。これでは監視体制に不備があると言われても仕方ありません。そのために報酬等委員会設置会社へ移行する必要があります。
さらに、クローバック制度*1やSay on Pay*2の導入も検討してもらいたいと思います。日産をこれからも継続させて行きたいのであれば、自分たちを厳しく律することに限界はないはずです。

*1 クローバック制度:不適切会計による巨額の決算修正や投資失敗で巨額損失が生じた場合、過去に遡り報酬返還を求める制度

*2 Say on Pay:取締役の報酬について株主総会での株主から賛否の意思表示をする拘束力のない諮問型投票

経営破たん寸前まで行ったときの辛さを思い出して、今一度、自分たちを振り返り、新たなスタートを切ってもらいたいと心から願います。